第15回研鑽会 2016年12月17日
鑑定方法及び,鑑定技術の認定会議
会則第7条(3)に則り,田村真樹事務局長からの申請に対する認定会議を行いました。申請内容は以下のとおり。
書字行動の蓋然的事象
内容
文字は,執筆者以外の人間にも判読を可能とするため,決められた形態や筆順などがあり,おおよそ5歳ごろから教育的指導が施され,正確な形態を覚えて駆使することが求められる。そうした環境下において形成される筆跡には,執筆者を問わず普遍的に表れる箇所が存在する。これを「書字行動の蓋然的事象」と表現する。
具体的使用例
- 筆跡異同の観察における,類似性と相違性の判断において,「書字行動の蓋然的事象」を活用する。類似性の判断では,同字のデータベースを参照することにより,鑑定資料と対照資料における「特筆すべき類似性」であるか,あるいは「書字行動の蓋然的事象」であるかを見極める。この作業は同時に,相違性の判断を並行して行えることも示唆している。
- これにより,従来ページ数が多かった筆跡鑑定書の無駄を省き,省ページ化することも可能であり,CO2削減への取り組み強化にもつながることになる。
- また,この考え方は,「書字行動の蓋然的事象」を「類似性」と同一視する,こじつけ論で構成された鑑定書に対抗する,反論書の作成にも役立てることができる。
使用条件等
- 類似性や相違性,又は希少性などを客観的に判断するために「筆跡データベース」の構築が必要である。これは「書字行動の蓋然的事象」を判断する上で最も重要なツールである。
- これまでの筆跡データベースは,筆跡の相違状況が「個人内変動の範囲」に入るか及び,「経年変化」であるかなどを判断したり,「希少性の有無」を検証したりするために運用されてきたが,「書字行動の蓋然的事象」を,類似性と分離する作業にも使用可能となるため,今後は筆跡データベースの構築と運用が,ますます重要になると考えられる。
- 更に,筆跡鑑定業界全体で活用できる,「筆跡ビックデータ」を構築することも提案したい。
上記申請内容は,指定鑑定人の全会一致をもって,同日認定されました。
※「書字行動の蓋然的事象」の名称と内容は,田村真樹氏が著作権を有するため,名称の使用や,内容の全部又は一部を含む記述に際しては,田村真樹氏の許可を必要とします。
参加者:天野瑞明,高崎仁良,田村真樹,齋藤健吾(敬称略)